出逢い

数々の大切な出逢いがあった。出逢いの最初のころはわからなかったが、ゆったりと、長い時間をかけて共に過ごした日々の中に、大切なものがあることに気がついた。
短い時間しか一緒にいられなかった方々との関りの中にも、心に深く刻まれた出逢いがあった。それは、ひっそりとやってきて、静かにたたずみ、僅かなときの中で、私に力強く希望を残していった。


自分自身のことにとらわれすぎて、周囲に目を向けることができなかった私は、今、ようやく、自分以外のことに心を向けることが出来るようになった。


そんなことを思いながら、今日も車を走らせ、カールに会いにいった。今日もカールは優しいまなざしを向けて、私を出迎えてくれた。


カールは背中の鞍の前のところをこちょこちょすると喜ぶそうで、スタッフの方が実際にこちょこちょしたら、鼻を伸ばしながら口をまげまげしていた。普段は見る事のできない表情で、とてもおかしかった。気持ちいいポイントは馬によって違うそうだが、その時の仕草は、どの馬も同じように、鼻先と口をまげまげするそうだ。


馬はとても繊細で敏感だが、カールは私が乗った馬の中でも、特に敏感なように感じる。スタッフの方からも、人影などで驚くことがあり、突然走り出したりすることがあるので、気を付けるようにとのアドバイスがあった。その言葉どおり、今日は、ヒヤッとすることが何度かあった。

馬は穏やかで優しいが、動物であることに変わりはない。スタッフの方々が日々お世話をし、私たちが乗る前にしっかり準備をしていただいているからこそ、楽しむことができることを忘れてはいけないと思った。習いはじめの頃に、スタッフの方から「指示通り動いてくれた時や、終わった後は、たくさん褒めてあげて下さい。」と言われたことを思い出しながら、乗る側も、馬に対する思いやりや、いたわる気持ちを持ちながら関わることが大切であることを、改めて感じた。
今日は、いつも以上に背筋を伸ばし、目線を上にあげることを意識しながら、カールと一緒に走った。カールとしっかり関係を築くまでは、芝生で走ることはおあずけだが、それまでは、しっかりと室内で練習に励んでいきたい。

終わったあとは、カールとの出逢いにも感謝しながら、汗と砂にまみれた毛を、優しくブラッシングした。